第38章 壁画の中の世界
ようやく、自分ではない感覚から抜けサランはサランとして振る舞うことが出来た。
「あなたには、あなただけの色がない。
こんな音すらない世界であなたは人の色を借りて偽りのあなたを作ってるだけです。」
静かにゆっくり一音一音噛み締めるように話すサランに、ムッとする。
ーーほぉ?わらわを説教だと?面白い。
その減らず口を閉ざしてくれよう。
茨がムチのように振り下ろされる。
サランはすぐに避け扇と呪文で戦う。
「このことを早くシルビアさんに教えなきゃ…!」
しかし、倒しても倒しても増える茨にサランの体力はなくなっていく。
ーーカカ、威勢だけは立派よのぉ?
だがいつまで持つかな?
サランは傷だらけになり茨がサランの手をつかみ持ち上げると体はぶらんと力無く垂れ下がる。
ーーそろそろ諦めよ。わらわと永遠になるがいい。
「い、いや…ぜったい…いや
あなた…とひと…つに、なるくらいなら…今
ここで、死ぬ…」
ハァハァと息を切らし力無くうなだれる。
(でも、私はまだ死ねない…死にたくない)
ほとんど残っていない力を振り絞り扇を刃物のように振り上げた。