第36章 迷子の女の子
パッと見、ただの女の子だ。
可愛らしい小さな子。そんな子からなぜおぞましいイメージが浮かんだのか自分では分からなかった。
「お姉ちゃん…もし、パパとママが見つからなかったらメルどうすればいいのかな?」
しょんぼりとしたその表情に優しく触れようにも触れることが怖く感じるサランは黙り込む。
「……わ、分からない。ごめんね。」
困ったように笑うがどうも上手く笑えない。
メルは不思議そうに自分を見る。
「ねぇお姉ちゃん、もう一度遺跡でパパとママを探しに行きたいからついてきてくれない?」
そっと、サランの手を握り引っ張ろうとする。
また不思議とくらい神殿みたいなイメージが頭を駆け巡る。
「どこ…?」
ふと、そんな言葉を口にして目を泳がす。
イメージはさらに続き小さな少女の背中が見えてくる。
少女が振り向こうとした時にサランはメルの手を振り払った。
「お姉ちゃん?」
パニックになったのかサランの息が荒くなる。
「あなた、本当に誰?」
「お姉ちゃん?何を言ってるの?メルはメルだよ?」
サランは首を横に振った。
ちがう。本当の彼女は別の何かだ。
確信はないが本能が、直感が近づいてはいけないと警鐘を鳴らす。
「ちがう。メルちゃん…パパとママを探してるわけじゃないでしょ…。パパとママはどこかにいて、シルビアさんやみんなをパパとママに連れてこいって言われてるんじゃない?」
自分がいかに残酷で恐ろしく相手を傷つけることを言ってるのか分かっていたが止めることが出来なかった。
自分の口が勝手に動く。喉が震える。
何を言ってるんだと自分でも思うが止まらない。
まるで誰かが自分の身体を使って喋ってるみたいだった。