第34章 重なる気持ち
しかし、そんな考えはふと思い出したモノによってサランの表情がじわじわ変わる。
そうだ、こんなとこでじっとしてられない。
だんだん明確になってくる命の大樹の崩壊。
それは誰の仕業なのか、ふとブレインを見つめる。
彼がみんなを騙しているのか?
それともこの旅自体が?
その表情にシルビアは心配そうに声をかける。
「サランちゃん?どうかしたの?
時々思い詰めた顔をしてるけど、何か隠してる?」
シルビアの言葉に驚き、バッと顔を上げシルビアを見つめる。
しかし、すぐに困ったように笑った。
「なんでもないですよ。」
そんなサランにシルビアは真剣な顔をした。
「サラン、アタシにごまかせると思うなら今すぐやめなさい。
アタシにも話せないの?」
「え…。えっと…。」
サランは視線をキョロキョロと泳がせた。
真っ直ぐ見つめてくるシルビアの目が見られない。
そんな真剣に怒るような悲しそうな目を初めて見るからだ。
サラン
静かに確実に逃がさぬような声色で名前を呼ばれサランは観念した。
これ以上黙ってても、誤魔化しても10数年付き合いのある目の前の騎士には何も通せる気がしなかった。
ずるいよ…自分は過去のことを何も教えてくれないのに。
詮索は野暮だって言いながら不敵な笑みで隠して。
自分の知ってるシルビアはいつもそうだ。
いつも、失敗を笑ってカバーして。
誰よりも優しくて、器用で上品で。
でも誰よりも強い。