第30章 月の涙
出来上がった短剣は銀色に輝きスラッとしていた。
刃は鋭く切れ味も良さそう。
手持ち部分は木で出来ており、輝く真珠が埋め込まれていた。
出来はとても良くシルビアも納得している。
「これなら、サランさんも喜ぶよ!」
ブレインも短剣の出来の良さに嬉しそうだった。
「ありがとうブレインちゃん。あたしすぐにサランちゃんのとこに行ってくるわ!」
ブレインが頷き、シルビアはサランがいる浜辺へ走って向かった。
サランはマルティナとしじまヶ浜にいた。
マルティナからロミアの話を聞いて切なそうに涙する。
「2人の魂が命の大樹の元、巡り逢えますように…」
夜の海の先に輝く大樹に2人は祈りを捧げる。
「ねぇ、サラン。なにか歌ってくれない?
2人があなたの声を辿ってまたここに…」
サランはマルティナの言葉に困ったように笑った。
「今は、あの二人に向かって歌える歌はないわ…」
そう言うとサランは目を瞑り優しく口遊む。
優しいさざ波のような綺麗な純情な人魚と優しく逞しい海のような人間の悲しく切ない恋を慰めるように…
「きっと、巡り会えるわよ。」
マルティナがナギムナー村からこちらに来る影に気づく。
細身の身体に筋肉がしっかりとついているその出で立ちはすぐに誰か分かった。
「私は、村に戻るわ。ちょうどシルビアも来たみたいだから。」
「え?」
マルティナは歩き出してシルビアとすれ違う。
「ありがとうマルティナちゃん。」
シルビアはにこりと笑ってサランの元へ歩いた。
「どうしたんですか?」
「フフ、ちょっとサランちゃんに渡したい物があってね。」
シルビアは作った短剣をサランに差し出した。