第2章 小さな蕾
観客を笑顔にするみんながどこか遠い存在に見えて、幼いサランにとってどうしても入れないその世界にいつしか憧れがあった。
「やだなぁ…生きてご飯があるだけ幸せだと思ってたのに…。
人らしく生活してるのに…」
それでも、自分とみんなには距離があるとサランには感じていた。
下を向き、懐かしい母の面影を思い出す。
歌が好きだった母はよくサランが夜中怖い夢を見て泣いていると優しい声で歌ってくれた。
その歌を一緒に歌っているうちに怖いことが光と共に消えていく。
今ある不安を消せないかと震える声で小さく歌った。
闇が光を隠しても
君の希望が消えない限り
闇に永遠は来ない
君の希望に私は救われたなら
私はあなたを救い出してみせるでしょう
君の声が光の鐘をならしてくれる
それを頼りに私はあなたを見つけ出す。
鐘を鳴らして、あなたに光を届けに行く
光見えぬ暗闇に希望の唄を
あなたに光が届くと願い続けて
歌い終わるとサランの頬に1粒の涙が流れた。
「歌じゃ…みんなと並べないか…」
ハハっと乾いた心無い笑いが出る。
それでも、久しぶりに歌ったことにより胸がぽかぽか温かく感じた。
「今の声…サランちゃんなの?」