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月夜の歌姫

第2章 小さな蕾


その夜、いつものようにシルビアの布団のそばで寝る準備をする。サランは不安になるとシルビアの布団に潜り込み、その温もりに包まれ安心感を得て眠る。

その日もいつものように起き上がって、シルビアの布団に入るかと思われた。

しかし、サランは起き上がるとシルビアを起こさぬようゆっくり静かに部屋を出ていった。

建物を出ていき町を抜け小高い丘に歩みを進める。
高いところから町を見下ろし深呼吸をした。

夜の冷えた空気はどこか清々しく落ち着きを与えてくれる。

「えっと…ニコスのポーズは…」

ステージの片隅から見ていた、ニコスの踊りを覚えてる限り真似をしてみる。
しかし、ぎこちなく足はもつれ腰もカクカクと動き思った以上に出来が悪かった。
しまいには足が絡みドサッと尻もちをついてしまう。

「あー、やっぱり私には難しいな…」

ハァとため息を零し俯く。
ニコスが練習をいっぱいこなしてることも知っていた。
自分も練習すればニコスのようにと思ったがニコスは踊りに関して天才的だった。
誰もが魅了される舞を見よう見まねで出来るはずがない。
浅はかだったなと、自分もキラキラしたあの世界に入れたらいいなと考える日もあった。
しかし、ジャグリングなんて出来ないしシルビアみたいに火を吹くことも出来ない。
空中ブランコや綱渡りは危ないからと禁止されている。
玉乗りもやってほしくはないと言われていた。
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