第1章 Du sollst an mich denken
『申し訳ございません!』
試験の次の日、僕は川崎ミアを呼び出した。
呼び出しの要件を伝えていなかったが、入室と同時に彼女は上体を90度に折り曲げて、謝罪の意を述べる。
僕は、その姿に苦笑した。
降:「まずは、落ち着いて話をしましょうか?そこに座って」
『はい』
彼女は、僕の言動が落ち着いていることを予想していなかったのだろう。
少しだけ怪訝な表情を浮かべたが、僕の指示に従って着席する。
降:「なぜ、呼び出されたと思いますか?」
『昨日、私が降谷さんの指示を無視したからです』
降:「そうですね。昨日、僕は研修生には退避を命じました。しかし、君はいの一番に現場に駆けつけ、状況確認をして僕へ報告の上、消火活動に当たりました」
『はい』
彼女は、自身の行動を反省しているようだ。殊勝な面持ちで僕の話を聞いている。
昨日の試験後すぐに、試験監督をしていた人事担当に呼び出されていたので、簡易的な厳重注意も受けていたのだろう。
僕は少しだけ、ため息を吐いてから口を開いた。
降:「確かに。自らの危険を顧みず上官命令を無視したことは、感心しません。君も知っての通り、僕らの仕事は危険と隣り合わせです。1人の判断ミスが、チームを危険に晒し、結果として我々が守るべきこの国の危機に繋がります」
『おっしゃる通りです』
降:「しかし…僕は思います。必ずしも、上官の判断が絶対的に正しいとは限らないと」
『え?』
殊勝な面持ちで僕の話を聞いていた彼女が、目を見開く。
僕は、彼女の反応に構わず続ける。