第1章 Du sollst an mich denken
僕の予想に反して、新人メンバーはお互いの意見を尊重しながら、それぞれの役割を全うして作戦を進めている。
僕は、メンバー1人ひとりの動きを確認しながら、彼らの査定をつけていく。
この査定を元に、彼らの配属先が決定するのだ。
僕の目に、川崎ミアの姿が映る。
彼女は、メンバーの中でも成績優秀。
後方の戦略参謀の役割が適任だと、僕は思っていた。
しかし、今回の作戦で彼女は前線部隊に居た。
その判断がとても興味深く、僕は彼女の一挙手一投足に目を凝らす。
ドーンッ!
唐突に何かが崩壊する音が試験場内で響いた。
僕は、音がした方向へ目を向ける。
実践を想定して、廃棄予定の爆弾を少量設置していた。
それが、何らかの原因で爆発したようだ。
降:「試験中断!試験官は、すぐに消火にあたれ!!研修生は、退避!」
僕は、研修生たち、試験官たちに向けて指示を飛ばす。
被害拡大を抑えるために、僕も近くにあった消火器を掴み現場へ走った。
試験官たちが駆けつける中、僕は目を疑った。
現場に一番に到着していたのは、川崎ミアだったからだ。
彼女は、消火活動をしながら被害状況を確認するため、爆弾の周囲をグルッと一回りしていた。
降:「川崎!」
『被害者なし。消火活動に注力します!』
僕の呼びかけに気づいた彼女は、手短に状況を報告して消火活動を続けた。
退避を命じられた研修生が命令を無視して消火活動を行っている姿は、試験官たちには異様に映ったようだ。
彼らは、しばらく立ち尽くしていた。
僕は、その様に呆れてしまい、語気を強めて彼らに再度指示を出す。
降:「他の者も消火しろ!」
「はい!」
僕の声に本来の任務を思い出した試験官たちは、やっと消火活動を開始した。
彼女の対応が早かったこともあり、この騒ぎは直ぐに収まり試験は再開された。
しかし、僕はこの事件の後片付けに頭を悩ますことになった…