第3章 年に一度の…
ジョ:「参加条件は、仮装すること!みんながどんな格好をするか、今から楽しみだわ」
『そうね!』
ジョディもまた、私のテンションが上がって来たことを感じたようで、笑みを深めていた。
ところが突然、彼女は私に体を近づけて、小さな声で囁いた。
ジョ:「ねぇ、ミア。私ね、キャメルにやってもらいたい仮装があるんだけど…彼に言っても良いかしら」
その姿が悪戯を考えてワクワクする少女のようで、年上にも関わらず「可愛いな」と私は思う。
『ジョディ、良いわよ。でも、私も同じことを考えているかもしれない。だから、合図に合わせて一緒に言ってみない?』
ジョ:「ナイスアイディア!」
楽しいことを考え始めた私たちを、もう誰も止められない。
キャメルに運転してもらっているにも関わらず、私たちのテンションは最高潮に達していた。
きっとジェイムズが同乗していたら、「任務で来日していることを忘れていないかい?」と嗜められただろう。
しかし、ここにジェイムズは居ない。
つまり、私たちの言いたい放題だ。
そして、私はジョディに目だけで合図を送ってから、キャメルへ声をかけた。
『ねぇ、キャメル。私たち、貴方にやって欲しい仮装があるんだけど…それはね…』
真面目な彼はスピードを緩めることなく、再びバックミラー越しに私へ視線を向ける。
ジョ:「フランケンシュタイン!」
『フランケンシュタイン!』
見事に私たちの声は揃った。
「作戦成功!」と思った私たちだったが、すぐに後悔することとなる。
キャ:「えぇ!?」
ジョ:「ちょっと、キャメル!前を向いてぇ!!」
私たちの悪戯が、予想以上の影響をキャメルに与えたようだ。
いつもハンドルを握ると、冷静かつ的確な判断を下す彼。
その彼が一瞬とはいえ、「運転している」ことを忘れてしまったのだから。
ジョディがすぐに声をかけなければ、私たちはボスの愛車と共に天国に召されるところだった。
その後すぐに、我に返ったキャメルから「悪ふざけはハロウィンだけにしてください」と嗜められたのは、言うまでもない。