第3章 年に一度の…
『ハロウィンパーティを開きたい?』
ジョ:「そう!貴女のウェルカムパーティも兼ねて、盛大に!」
FBIの現地拠点に向かう車内で、ジョディの興奮した声が響き渡る。
『あのハロウィンよね?』
私は毎年、近所の子どもたちが仮装をして、家々を訪ね歩くイベントのことを思い出していた。
ジョ:「そうよ、あのハロウィンよ?」
助手席に座るジョディは、後方に座る私に身を乗り出しながら話してくる。
『ジョディ。あれは、子どもたちのイベントでしょ。私たちみたいな大人にとっては、お菓子を用意するだけのイベントじゃない。そんなに盛大に祝うことかしら?』
私はジョディがとても嬉しそうに話している理由が、全くわからない。
半ば子を諭す親の心境で、彼女に問いかけた。
私たちの母国、アメリカで毎年10月31日の夜に行われるイベント、ハロウィン。
それは、子どもたちが楽しむイベントだ。
ニューヨークでは、ハロウィンパレードという大人も仮装して楽しむイベントも確かにある。
とはいえアメリカ全土に根付いているのは、やはり子どもたちがメインのイベントだ。
そんなハロウィンパーティを盛大にやりたいと言っているジョディの気持ちを、私は理解することができないのだ。
キャ:「ジョディさん。もう少し、詳しく話した方が良いと思いますよ。ミアさんは日系人とはいえ、初来日ですから」
私とジョディのやり取りが堂々巡りになると察したキャメルが、助け舟を出してくれる。
(キャメル、ナイスフォロー!助かる)
私は、バックミラー越しにグッジョブ!とキャメルにだけわかる様にサインを送った。
キャメルは軽く頭を下げて見せる。
空港でもそうだったが、こういった気遣いが彼の良いところだと私は思う。
ジョ:「そうだったわね、キャメル。ミアだから知っていると思って、つい。ごめんね、ミア」
私たちのやり取りを気にも止めず、ジョディは私に素直に謝罪する。
(そういう素直なところが、ジョディの憎めないところよね!やっぱり良いな、この2人と働くの)
改めて仲の良い同僚たちと、また働ける嬉しさを実感する私。
『ううん、気にしないで。ジョディが楽しそうで、私も嬉しいから』
ジョ:「私もよ!ミア」
再び、車内にはジョディの興奮した声が響き渡るのだった。