第3章 年に一度の…
「Welcome to Japan! ミア。貴女とまた、仕事ができるなんて最高!」
入国ゲートを抜けて周囲を見回していた私に、聞き覚えのある声が聞こえてくる。
私は声がした方を振り返ろうとしたが、その前に声の主に後ろから抱きつかれていた。
久しぶりに海を渡る長時間のフライト。
少しだけ疲労を感じていた私だったが、その明るい声を聞いて一瞬にして、疲れが飛んでいった。
『Oh!ジョディ。熱烈歓迎、嬉しいわ』
私は1年ぶりに会う同僚の熱い歓迎を受け止める。
ジョディのテンションの高さには、慣れている私。
しかし周りにいる人たちが見て見ぬ振りをしている姿を目にして、私はここが日本であることを改めて思う。
「ジョディさん。そろそろ離して差し上げた方が良いのでは?」
ジョディの腕をやんわりと離そうとした私。
すると隣から、少し躊躇いがちに優しい男の声が聞こえて来た。
ジョ:「あら、キャメル。1年ぶりの再会よ。別にいいじゃ無い!」
キャ:「そうですが…ミアさんが少し苦しそうですよ…」
ジョ:「そうなの?ミア??」
私は夫婦漫才のような2人の掛け合いを聴きながら、「そろそろ恥ずかしくなって来たな」と思う。
一方、抱きついた腕の力を緩めることがないジョディは、私の顔を覗き込んで来た。
ジョ:「ミア…そんな顔をしないで」
私が何とも言えない表情をしていたのだろう。
ジョディは少しだけ悲しそうな顔をして、やっと抱く腕の力を緩めてくれた。
私はジョディたちへ体を向けて、とびきりの笑顔を浮かべる。
『ジョディ、キャメル。久しぶり!そして、迎えに来てくれて、ありがとう!』
ジョ:「貴女が日本に来てくれて、本当に嬉しい!こちらでも、よろしく!」
キャ:「長旅、お疲れさまです。これから、よろしくお願いしますね」
口々に歓迎の言葉をかけてくれる同僚たちの存在を嬉しく思いながら、私は少しだけある人の事を思っていた。
(シュウは、来てないか…まぁ、当然よね)