第2章 Trick or Treat !?
ほんの一瞬の出来事だったが、僕には時が止まった様に思えた。
そっと彼女の頬から唇を離して、僕は彼女の表情をマジマジと見つめる。
案の定、今の出来事は彼女の思考の範疇を超えた様だ。
川崎さんお決まりの表情を浮かべている。
そう金魚の様に、口をパクパクさせているのだ。
僕は笑いそうになるのを堪えて、そっと囁く。
降:「返事は?」
その声に思考を取り戻した彼女は、躊躇うことなく答える。
『不束者ですが、末長くよろしくお願いします!』
(川崎さんの返事は、いつも独特過ぎる…まぁ、それが魅力でもあるんだけど)
川崎さんをもう一度、抱き寄せて僕はそっと呟く。
降:「Trick or Treat ? なんてね。君に選ぶ権利は無いよ」
驚いた表情で口を開けていた川崎さんの唇を、僕は自分のそれで塞いだ。
(これは、無自覚で悪戯する君へのお仕置きだよ…)