第2章 Trick or Treat !?
降谷Side
降:「風見、川崎さんがターゲットと接触した。視認できているか?」
風:「はい。後を追います」
降:「了解。僕もすぐに追いかける」
潜入を開始した川崎さんの位置情報を手元の端末で確認しながら、僕は風見たちに指示を出していた。
会場に入ってすぐに声をかけられるとは、やはり川崎さんが適任だったと改めて思う。
彼女自身は自覚していない様だが、彼女の容姿は目を引く美しさだ。
彼女がチームに入ってから、メンバーたちが容姿に気を使うようになったことを僕は見逃していない。
(少しは自覚して欲しいよ…誰かが告白しかねない状況で、こっちは気が気じゃ無いんだから)
それは、風見も例外ではなかった。
故に、いつも衣装の準備を風見に一任している僕であったが、今回の衣装については風見の申し出を断って、自ら準備したのだ。
僕は思っている以上に独占欲が強い事を、この時、初めて自覚した。
気持ちを切り替えるために、深く深呼吸をする。
そして、僕は手元に置いてあった顔半分が隠れる仮面を着け、会場へ向かった。
会場に入ってすぐ、組対のメンバーが数人いることを視認した。
彼らも風見の指示を受けて、突入の準備体制に入っている様だ。
僕は彼らの衣装を見て、小さくため息をついた。
仮装で参加とはいえ、彼らは全員がFBIのコスチュームを着ていたからだ。
(おいおい。いくらバレやすい容姿を謀るためとはいえ、その格好で突入したら冗談だと思われるだろ…)
彼らのセンスに悪態をつきつつも、僕は風見に懸念事項として伝えておく。
風見から、「以後、気をつけます」という返事が返ってくる。
(まぁ、お前の仕事じゃないけどな。そういう真面目なところは憎めないし、僕も部下に居てくれて有難いんだけど…)
思いもかけぬところで、風見の人柄の良さを改めて思い返していた僕。
後ろに迫る人物に気づくことが、一瞬、遅れてしまった。
唐突に僕は、腕を掴まれていた。
「あ…ごめんなさい。てっきり私の知り合いかと思ったんだけど…違ったみたい」