第2章 Trick or Treat !?
降:「まぁまぁ。冗談はここまでにして、本題に戻るよ」
『お願いします!』
「脱線させたのは、降谷さんでしょ?」という言葉が、出そうになっている私。
しかし、その言葉を飲み込んで降谷さんの話に耳を傾ける。
降:「川崎さんには、パーティ参加者として潜入してもらいたい。ターゲットたちは、一般客に向けて新種の薬物を売ろうとしているらしくてね。そこを現行犯で押さえたいんだよ」
『私で大丈夫ですか?』
降:「ああ。君が適任なんだよ!」
降谷さんは自信を持って答える。
『適任…ですか?』
降:「考えてみて…組体もマトリも仕事の性質上、素人には見えないだろ?たとえ、仮装していてもね。その点、君は違う。一般客として紛れることができる」
『確かに…』
降谷さんの力強い説明を聞くと、私は何の疑問を持たず納得してしまう。
降:「それに今後は君も、ゼロの一員として潜入捜査もしていくから。今回は実践練習だと思って臨んでね」
『承知しました!』
任務の目的を理解した私は、いつものように元気よく返事をする。
降:「優秀な君だから、言わなくても大丈夫だと思うけど…一応、伝えておくね。犯人を見つけても君が取り押さえるのは、禁止だよ?あくまでも君は、一般人として終始振る舞ってね。検挙するのは、組体とマトリの仕事だから」
『うっ…承知しました。心して任務に当たります』
初めて経験する現場に、私はワクワクした表情を見せていたのだろう。
降谷さんはその様子を見て、釘を刺すのを忘れていなかった。
改めて降谷さんに承諾の意を伝えて、私は部屋を後にした。
降谷さんが私のことを「適任」と言う際に、彼の目が怪しく光っていたことをすっかりと忘れて…
そして任務当日、私はそれを忘れて追求しなかった事を激しく後悔するのだった。