第1章 Du sollst an mich denken
僕らにとっての「勿忘草」は「爆弾テロ」だった。
なんとも物騒なモチーフだけれど、なんだか「僕たちらしいな」とも思う。
目の前に居る川崎さんに気づかれない様に、僕は薄く笑ってから彼女を見やる。
『こんな私ですが、末長くよろしくお願いします!』
恥ずかしそうに、けれど、どこか自信に満ち溢れた笑顔で僕に宣言する川崎さんが立っていた。
降:「こちらこそ、末長くよろしく!あ。当分、君は爆弾テロには臨場させないから」
どんなに甘い空気であっても、僕は釘を刺しておくことだけは忘れない。
『え!?どうしてですか?』
降:「毎回、毎回、君が特攻した後に、後始末をするのは僕だからね。現にこの後、僕は黒田理事官に呼ばれているんだから。もう少し、僕のことを君は考えるべきだね」
『うっ…そうでした…』
明らかに落ち込む川崎さん。
普段は感情を噯にも出さないくせに、僕の前では素直に出す。
その姿を僕は愛おしく思う。
降:「ほら、僕と一緒に特攻しなくても、この国を守る術を考えて行くんでしょ?」
『そうでした!やっぱり、降谷さんには敵いませんね』
すぐに笑顔を取り戻して、元気に答える川崎さん。
我ながら、「飴と鞭の使い方が上手いな」と思う。
同時に、彼女に翻弄されている自分にも僕は気づく。
けれど、そのことを川崎さんが知るのは、まだ先のこと…
―Fin !?―