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【R18】コナン短編集【赤井秀一・降谷零】

第1章 Du sollst an mich denken


降谷Side

やっと、3年間の僕の想いを川崎さんに伝えることができた。
3年前に出会った時、僕の手元で育てたいという気持ちがなかったわけではない。
むしろ、すぐにでも「ゼロ」に所属させたいと心底、思っていた。
しかし今は、彼女を別の部署へ着任させてよかったと思う。
川崎さんは、多くのことを身につけて成長してきた。

(「僕との出会いを忘れる」という事実は、大きな誤算ではあったけれど…)

かつて、共に働いたドイツ人から聞いたおとぎ話を僕は思い出す。
それは、勿忘草の言い伝えだ。
当時の僕は騎士の言動に、全く共感しなかった。
本当に愛する女性を思うのであれば、死の間際に

「Vergiss mein nicht!(僕を忘れないで)」

なんて言葉は、残せないと思ったからだ。
そんな言葉は彼女を一生、束縛してしまう。
彼女の願いを叶えるためにその身を投じたのであれば、その先は彼女の自由にすべきだ。
現に彼女は一生、「勿忘草」と共に純潔を守り続けた。
きっと「勿忘草」を見るたびに彼女は、彼のことを思い出していたのだろう。

けれど、今の僕は騎士の気持ちが痛いほど、わかる。
この先、側に居られないからこそ「『自分』という人間を覚えていて欲しい」と強く願ってしまうのだ。
もし、3年前に僕が彼女に「その宣言を忘れないで」ではなく、

(「僕を忘れないで」と言っていたら、彼女は僕との出会いをずっと忘れなかったのだろうか…)

そこまで考えて、僕は思考を止めた。
今となっては、それが愚問だと気づいたからだ。
こうして、彼女は僕の側に居て、「ずっと居たい」と思ってくれている。
それだけで十分だ。
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