第1章 Du sollst an mich denken
降:「本当に君は、変わらない。3年前も今も、いつも僕は、新しい君に驚かされてばかりだ」
『そんなこと…』
降:「無いとは、言わせないよ?まぁ、本人が気づいていないんだろうけど…」
『だと、思います』
降:「へぇ…素直だね」
『…‼︎?』
降谷さんが落ち着いた声に少しだけ色気を含ませて、囁く。
私は本日、何度目かわからない赤面と絶句に陥った。
(あ…ダメ。不意打ちに私は、弱いんだ…降谷さんが言う新たな自分って、コレだ)
既にショートしている思考回路で考えても、その先はバーンアウトしか待っていない。
まともな思考ができない私が出した結論は、「相手を受け入れる」だ。
ただし、相手の意図とはズレた捉え方をして「受け入れた」のは、致命的。
残念なことだが、当の本人はその事には気づいていない。
降:「ごめん。ちゃんと話すから…聞いてくれる?」
降谷さんは、またも思考停止に陥っている私を見て、話が正常に進まないと気づいたのだろう。
仕事用の声に戻って、話を続ける。
降:「3年前に出会った時から、僕は君のことを大切に育てたいと思っていた。最初は、組織にとってかけがえのない存在だと思ったから。けれど、試験の君の行動と、その後の宣言を聞いて考えは変わった。君と一緒にこの組織を良い方向へ変えながら、この国を守っていきたいって。それを阻む物が現れたら、いくらでも僕は君の盾になってやろうと思ったよ。この気持ちは、今でも変わらない。そして、これから先も君の成長を…隣で見守っていたい」