• テキストサイズ

【R18】コナン短編集【赤井秀一・降谷零】

第1章 Du sollst an mich denken


『え?』

唐突な降谷さんの言葉に、私は反射的に顔をあげる。
そこには、予想外の光景が広がっていた。
降谷さんが、懐かしいような、慈しむような表情で私のことを見つめていたのだ。

降:「どうも、貴方は忘れているようですが…爆弾テロ現場に飛び込んだのは、2度目ですよ?」

さらに耳を疑う言葉を私は聞き、理解が追いつかない。
この場にそぐわない表情を、私が浮かべているのだろう。
その様子に今度は、苦笑しながら降谷さんは話を続けた。

降:「僕が今でも忘れられない昔話を、聞いていただけますか?」

降谷さんは、優しい声音で私に問いかける。
目の前で起こっている事に未だに気持ちが追いつかない私。
頷くことで精一杯だ。

降:「僕が新人研修を担当した時、卒業試験で爆弾テロ事件を課題にしたんです」

「爆弾テロ」という言葉に私は、何かが呼び起こされる感覚を覚える。
しかし、ぼやっとした感覚があるだけで、明確な事は思い出せない。
私は黙ったまま、降谷さんの話に耳を傾け続けた。

降:「その時、我々の不手際で爆発事故が起こりました。すぐに僕は、試験官には消火を。研修生には退避を命じました。しかし、その場に最初に臨場していたのは、研修生でした。そして次の日、その研修生は僕に呼び出されて、入室後すぐに上体を90度に曲げて謝罪したんです。上官命令を無視したことについて。でも、僕はその事を不問に付すこと、今後の活躍を願っていることを伝えました。すると、その研修生はその場で宣言したんですよ。『いち早く成長して、僕の右腕になる』って」

降谷さんはここで一度、言葉を切り、私に向けた瞳に強い光を宿した。

降:「これ、誰だと思います?」

私は、降谷さんの眼差しに既視感を覚えた。
そして、先ほど現場に向かう際に感じた違和感も同時に思い出す。

『あ!』

降:「思い出しましたか?」

私がやっと思い出したことが、嬉しかったのだろうか…降谷さんの目元が少し緩められた。
/ 57ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp