第1章 Du sollst an mich denken
『本当に申し訳ありません!』
庁舎に戻ってきた私は降谷さんの執務室に入るや否や、上体を90度に折り曲げて謝罪をする。
私の姿を見据えているであろう降谷さんは、無言のままだ。
『私の勝手な行動が、現場をさらに窮地に落としかねなかったことを深く反省しています!』
降谷さんの表情を窺い知ることはできないが、かなり怒っているはずだ。
私は頭を上げずに、反省の意を述べ続けた。
降:「まず、顔をあげましょうか?川崎さん」
抑揚のない降谷さんの声が、室内に響く。
私は、恐る恐る顔を上げた。
降:「我々の目的は、何ですか?川崎さん」
抑揚のない声で、私に問いかける降谷さん。
その表情からは、感情が全く読み取れない。
『この国を守ることです』
私は、いつも心に刻んでいる言葉を答える。
降:「そうですね」
それだけを告げて、降谷さんは再び口を閉ざす。
室内は、沈黙に包まれた。
降谷さんの表情もまた、この沈黙と同様で感情を露わにしていない。
一層のこと、怒りをぶつけてくれた方がマシだと私は、思う。
何とかして彼の意図を読み取ろうと、その顔を私は見つめてみる。
降:「そんなにマジマジと見ないでください」
『も、申し訳ございません!』
食い入るように見ていたのだろう。
その事を指摘されて、私はすぐさま俯いた。
ふいに降谷さんが、ため息をつく。
降:「川崎さん。やはり貴方は、変わらないですね」