第1章 Du sollst an mich denken
―現代―
降:「業務の一連の流れは、以上だ」
『承知しました。ありがとうございます!』
僕は、着任した川崎さんに業務の大枠を伝えた。
研修当時から変わらず、彼女は飲み込みが早く、質問も的確だ。
前任部署で情報収集と対策立案を実施していたこともあり、当時以上に質問のレベルが上がっている。
(ゼロの業務にもすぐに、馴染むだろう)
僕は自身の判断に手応えを感じた。
降:「当分の間、川崎さんは僕と一緒に行動してもらうから」
『え?降谷さんとですか??』
降:「何か問題でも?」
僕と行動すると聞いて、今まで真面目に話を聞いていた彼女の表情が、急に困惑したものに変わった。
『あ…いえ…問題というわけではなく…』
はっきりと返事をしない彼女。
僕は、その様子を不思議に思う。
ふと、僕が密かに「ドS上司だ」と言われていることを思い出す。
降:「そんなにドSじゃないと思うよ?僕」
『いえ!決してそのようなことではなく…』
首を大きく振りながら僕の発言を否定するが、本題については言い淀む彼女。
その姿があまりにも可愛くて、もっと困らせたいと思う。
(こういうところは、確かにSかもしれない)
1人で納得しながら、僕は不敵な笑みを浮かべながら彼女に質問を続ける。