第1章 ラビスタ編〝未来の海賊王へ〟
「港担当ってこんな暇だったのか…」
穏やかな海を目の前に海岸に積み重なっているテトラポットの上にキルマは立つ。
(そういえば昨日まで海で嵐があったって新人が言ってたな…)
おそらくそれが原因であろう。
毎日のように来る定期船の進路、ライナーの方向を双眼鏡で確認するが波は平行線のまま、来る気配所か、観光船、海賊船までもやってこない。
視界にギラギラと光る太陽の前に手をかざし目を細めた。
昨日までの約一週間、ダルクに書類のハンコ押しと図書室を往復する雑用にされていたキルマは外の様子はジークの店へ行く通り道以外把握していない状態だった。
あぁ、もしかしてあの大雨だった時か。と、思い当たる節を探りながら真っ青な空を仰いだ。
屋外での仕事は新人が来てから受け持っていない。キルマからしたら数か月振りの屋外の仕事でもあった。
熱帯の風は生暖かく、お世辞でも気持ちいいと言える風ではないが、彼の目の前に広がる澄んだ瑠璃色の海がそれすらも忘れさせていた。
そして海岸を見渡すと来客用の停泊場には一隻の船も止まってない。キルマは「はぁ…」と小さなため息をつき、絶望と希望を繰り返した。
今日は嵐が明けてまだ一日しか経っていない。どうやらタイミングが悪かったみたいだ。
天候は最高で最悪。昨日の嵐で一隻も来ない船。時間が経てば経つほど滞りなくモチベーションが下がっていく。
キルマは双眼鏡を投げ出し砂浜へ降りると、近くにあった日陰に座り込み、ただ意味もなく砂の山を作り始めた。