第1章 ラビスタ編〝未来の海賊王へ〟
「そこの女!」
「はっ、はい…ッ!」
キルマが声をかけると女は途端にフォークを落とし、子供を庇うように抱きしめた。
「フードがズレて顔が見えてる。そろそろ混み合うからここでさっさと食うか持ち帰るかなんなりして、今すぐ出ろ。気分が悪い。」
「ご…ごめんなさ…」
キルマはジークがいち早く察して手に持っていたビニール袋を奪い取ると女に差し出した。袋の中にはもうひとつ、女が注文したはずがないステーキが無造作に入っていた。
そこに女が切り分けていたステーキも一緒に無造作に詰め込むと女にその袋を押し付けた。
「早く出ろ」
キルマが冷たく言い放つ。
女は戸惑いながらも袋を受け取り足早に店を後にした。 キルマはそれを見届けると再びハイチェアに腰を下ろし、いつの間にか空のグラスに入れられた水をぐびぐびと一気に飲み干すと机に置いて席を立つ。
「じゃあ、また昼来るねジークさん」
代金を机に置くと、捨て台詞を残し手を振りながらキルマは港へと向かった。
「………たっく、いつも余計なお世話だと言っているだろ」
カウンター前に置かれた二人分の代金と綺麗なままのフォークとナイフを見て、ジークは呆れたようにそう呟いた。