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【ONEPIECE】青 銅 の 剣 と 番 犬

第1章 ラビスタ編〝未来の海賊王へ〟



「ジークさんおはよう‼」
「…………キルマ、もっと静かに入って来いといつも言っているだろ」

 時刻は早朝。まだ人通りの少ない無風の商店街を駆ける青髪の少年がひとり、〝準備中〟と書かれたレストランのドアを容赦なく開けた。
 バンッ、と大きな音を立て、いつもの挨拶をカウンター前の隙間から厨房にいる人影に向かって叫ぶ。この店の店主、〝ワリス・ジーク〟に向かって言うのは彼の日課である。

 ジークが経営する店はラビスタ島では有名なステーキ酒場で店の外にある赤い牛の看板が目印の通称〝赤牛酒場〟で名を広げている。

 使っているのはもちろんラビスタ産の牛肉だ。少し離れにある緑生い茂る牧場で育った牛達の選りすぐりの部位だけを厳選し仕入れ、独自の調理方で肉を仕込む。このすべてを十数年間ジークひとりでこなし、経営を回してきた。

 他にも米や酒、ワインももちろん、全てラビスタ産のモノを取り揃えている。

 そして今日も彼の店へ来たラビスタ島の海を映したブルーのジャケットと黒のハーフパンツにグローブを身をまとった〝キルマ〟と呼ばれた少年。
 珍しくジークから返事を貰えたことに微かに緩む頬をグッと抑え両腕を組み、軽い足取りでカウンター席へと向かう。

 いつもは黙ってキルマに目もくれず、ただ淡々と肉の仕込みをし、彼のために調理するだけのジーク。反応が貰えただけでもラッキーと言える。

 今日は雨が降りそうだ。と、キルマは俯くと歯を見せながら笑みを浮かべた。

 なぜならキルマは5年前からこの島に住んでいる。そして約5年間もの間、毎日のようにここへ来る。
 朝昼晩、用がない日以外は必ずと言ってもいいほど彼はジークの元で食事を済ますのだ。

 毎日三回は来る彼の姿、ジークが見飽きないはずがない。
 慌ただしく開店前の早朝からドアを開けられ、毎朝同じ言葉を言うキルマの声でジークの朝は来ると言っても過言ではない。

 時にはその言葉を聞いただけで絶望することもあり、ありがた迷惑である。

 キルマはいつも座っているカウンター左端のハイチェアに座ると「今日はデミグラスの気分!」とソースだけを注文した。
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