第1章 ラビスタ編〝未来の海賊王へ〟
いまだラビスタ島では戦傷し帰れなくなった海兵達、海賊達が病院で治療を受けている。
再び一人の海兵は小切手を差し出した。
《「許されなくてもいい。ただこれを貰って頂けるまで、私達は帰りません」》
小切手を差し出したまま一向に屈しない海兵に、ガルドはならば、と条件を突き立てた。それを聞いた海兵はかつてない空前の要求に眉間に皺を寄せ因循な態度を見せた。
ひとつは〝捕まえた海賊達を開放する事〟
今回の騒動で捕まえた海賊達全員を開放し、インペルダウンへの連行を無効とすること。
ふたつは〝ラビスタ島を特別中立保護区域にすること〟
ラビスタ島に訪れるすべての者が権力地位、人種職賞金首関係なく、一般人として平等に扱われること。
これがガルドの出した条件だった。
そして後にその条件を海軍本部は承諾。出された手書きの書面にサインをし、ガルドはようやく小切手を受け取った。
海軍がこれを世界政府に届け出たことをきっかけに契約は正式に承認され、再びラビスタ島には平和が訪れた。
そして事件から復興にかけた一年間、ラビスタ島には多くの海賊達が訪れ島を修復し、多額のベリーが世界中から匿名で寄付されたという。
これは、海賊達ではなく海軍がラビスタ島で起こした最初で最後の事件として新聞の切り抜きと共に書斎へと記録された。
この騒動をきっかけに王下七武海制度ができたとかできてないとか。風の噂である。
「そうだな、ナミさんの言う通り丁度食料が底をつくところだ。ここで下準備としようじゃねぇか」
「野郎ども! 全速前進だ!」
「そんなに急がなくても島は逃げねェよルフィ」
バルコニーのフェンスに背を預ける緑髪の男、ゾロはそう言うとゆっくりと目を閉じた。
ラビスタ島に昔、そんなことがあったとは知る由もないルフィ達の海賊船を手招くように風は追風へと変わった。