第2章 ラビスタ編〝亜熱帯雨林の逆行〟
「どう? 今日も美味しいでしょう」
「うん、すっごく美味しいよ!」
その言葉にやはりナミが自慢げに笑うと同じようにナミもサンドウィッチにかじりついた。
サンジが席に着くと食卓は一層賑やかになった。
ルフィが皆の食事を奪い、ナミにしかられ、チョッパーが牛乳をこぼし、ゾロがそれを慌てて拭く。ウソップが飲み物を取りに行こうと席を立つと同時に「俺がやる」とサンジも席を立つ。
口は上下に動きながらもキルマは自身にとって非日常的な光景から目が逸らせずにいた。
共に冒険する仲間、昔の自分達のように同じ刺青を入れいているわけでもない。
彼らを、繫いでいるものは何なのか。
キルマはこの時、分からなくなってしまった。
友達とは、仲間とは、なんなのか。
「…皆はさ、」
唐突に出た言葉はルフィとナミの喧嘩によってかき消される。
しかしチョッパーがその問いかけに気づき、キルマに視線を移した。それに気づいたキルマが、やっぱりなんでもないと言わんばかりに笑顔を向けると最後の一口だったサンドウィッチを口に放り込んだ。
(皆は、もし仲間の一人が裏切者だったらどうするんだろう。)
特に深い意味はなかった。単純な、ただの疑問だった。
聞かなくても、きっとみんなの答えは、同じだろう。
〝--そんなこと、絶対にしない〟
目に見えるものが真実であることは確かだが、見えるものだけがすべてとは限らない。
あの日の記憶に、夢に、キルマは一瞬思いをはせるとテーブルを挟んで目の前にいたゾロからいちごを奪い取り口に運んだ。