第1章 ラビスタ編〝未来の海賊王へ〟
母と同じだ。そう思いビビと母の姿が追憶と重なる前にビビがゆっくりと振り返り、キルマははっ、と我に返った。
「ずっと私を見てくるから気になっちゃった」
「ああ、いいえ、何も。……ただ、綺麗な髪だなって」
意地悪そうな笑みを浮かべながらビビが問う。
珍しく目を泳がせながら動揺するキルマだったが、少し間を開けてそう小さく呟くとビビが穏やかに「ふふ、ありがとう」と目を細め自身の髪に手櫛を通した。そのまま毛先を手に取り見つめると、流れるようにキルマに視線を向けた。
「あなたも、綺麗な青髪ね」
「……ありがとう。僕は父譲りで、」
「そうなのね、…じゃあお母さんは?」
「…ビビと同じ、水色の長髪だったよ」
「そう、じゃあ私と一緒ね」
ビビはキルマに対しそれ以上の散策はやめた。
〝『……ただ、綺麗な髪だなって』〟
(……だった、か)
ビビは静かに深呼吸をするとまた暗い海の先を目に映した。
「長い髪が好きなら、あなたも伸ばすといいわ」
「………へ?」
暗い海に視線を向けたままビビが言った。予想もしなかったビビの発言にキルマの声が裏返る。