第1章 ラビスタ編〝未来の海賊王へ〟
人口の半分以上が島外の人で賑わうラビスタ島は悪事の隠蔽を働く海賊達の潜伏先、数多くの島を繋ぐラビスタ島行きの輸入船での脱走や逃亡など、海賊達の格好な獲物でもあった。
そして、これをきっかけである事件が起きた。
ラビスタ島で海賊達を待ち伏せしていた海軍とその海賊が衝突し大規模な争いへと発展。関係のない市民や観光客までも巻き込み、その騒動は新聞の一面を飾るほどだった。
後に海軍が心からの謝罪と多額の賠償金を持ってラビスタ島へやってきたが当時島を取り仕切っていた老人〝シリウス・ガルド〟はそれを断った。
《「そんなことで許されると思っているのか」》
ガルドは激怒した。
海軍がいてもいなくても、ラビスタ島には多くの海賊達が訪れる。それぞれ違う旗を掲げた海賊達に行く当てをなくした者、一足即発の状態が毎日続いてるようなものだった。
そんな中であるにも関わらず、海賊達の衝突はラビスタ島で一度も耳にしたことがない。彼らはラビスタ島で血で血を洗うことはけしてしなかった。それはこれからもこの先も、この島は存在意義のある島だという証明でもあった。
それ故に、海賊達の間ではラビスタ島を休戦の島と呼ぶ者も少なくない。
これはけしてガルドが海賊達に念を押してお願いをしていたわけでも、事前に注意を促していたわけでもない。どんな凶悪を過去に働こうが、所詮は皆同じ赤色の血が巡る同士。生まれた時から心を持った人間である。
この島には、不思議な力がある。それはガルドの口癖だった。
それは誰にも証明できない、証明することが出来ない不思議な力。
《「この戦い、お前達の負けだ」》
そしてガルドは言う。偽物の正義を背負った海軍に。
その言葉に正義のコートを羽織った1人の海兵は俯くと帽子のつばをつまみ深く被り直した。その場にいた海兵達も、ただただ唇を噛み締めることしか出来なかった。
なぜなら、ガルドが言っていることは、何一つ間違っていなかったからだ。