第1章 ラビスタ編〝未来の海賊王へ〟
夕食を食べ終わると皆はそれぞれ思い思いの時間を過ごす。
ナミはで航海図を書き進め、チョッパーは医療品の不備を明日買いに行くため整備をしている。
一方、あくまで来客であるキルマは今日の昼すげない態度を見せたサンジの元にいた。
未だキッチンで皿洗いをしているサンジにキルマはちらちらと後ろから覗き込みながら口を開く。
「僕も手伝おうか?」
「いらねぇよ」
「そう? じゃあお皿拭こうか?」
「だから、いらねぇって言ってんだろ」
「つれないなぁ~」
どういう風の吹き回しか、キルマに好かれるような事は何一つしていないはずなのに、彼はいちいちサンジの周りをウロウロと歩き回っては声を掛け、断られてはそのまた繰り返し。
それなのになぜかキルマは楽しそうである。
どちらかと言えば好かれるよりか距離を置かれる言うな発言しかしていないはず、なにかの記憶違いかとサンジは少し頭を悩ませたがもちろん違う。
ただ今日の昼よりも、サンジがキルマに対する価値観が変わったのは事実だった。
「俺の飯をあんなに美味そうに食う奴は始めてた。どうせ、小さい頃ろくな思いしてないんだろ。………俺もそうだった。」
キルマは大きく目を見開く。彼は過去の自分と照らし合わせ、同情し憐れんでいたのだ。
しかし、サンジのそんな過去を知る由もないキルマは、自分の知らない間に食事中そんな風に見られていたなんて、と唇を尖らせるがサンジが自分を憐れんだことに気を良くしたのか、なぜか嬉しそうに口角が徐々に上がっていくのをサンジは見逃さなかった。
「……勘違いするなよ。俺は、お前が嫌いだ。」
「うん。知ってるよ」
彼の態度とは真逆に笑顔で答えるキルマ。
「だったらなぜ俺ばかりに付きまとう」
「だって、君とはまだ友達になれてなかったから」
それを聞いたサンジは少し間を開けると諦めたようにはぁ、とキルマの目の前で大きなため息をついた。