第1章 ラビスタ編〝未来の海賊王へ〟
「ちょっとまってキルマくん。それ、ほんとなの?」
食いついたのはやはりナミだった。
机に肘をつきながら自身の指を顔の前で絡めるとキラリとナミの目が輝く。
「え、なにが?」
「10億ベリーよ、10億ベリー!」
「うん、多分ね。最近確認してないからわかんないけど去年はそれくらいあったと思う」
そう言ってキルマが懐から取り出したのはシルバーに輝いた一枚のカード。
「これ…っ、世界政府公認のベリカ…ッ‼」
「へぇ、ナミ知ってるんだ」
「当たり前よ! これさえあれば、紙切れに数字を書いて、カードIDを記載するだけで…、ねぇ、見てもいい?」
「もちろん」
キルマは特に警戒することなくナミにベリカを手渡した。
通過審査があるため、海賊で名の通った者は絶対に使えない。
就職、指名、所属、職業、資産、身内。偽名を使ったとしてもバレてしまえば最後、口座は強制閉鎖され、もし多額のお金をためていたのであらば、そのベリーも帰ってくることは二度とない。
なのであまり海賊達の中で流通はしていないが、ナミほどのお金に目がない者であれば耳にすることはある。
このカードさえあれば道端に落ちている紙切れさえもお金に出来てしまうとんでもないカードだ。このカードを持っているだけでどれだけ彼に資産があるか十分わかるほどの価値がある。
「そんなにすげェもんなのか」
「当ったり前でしょ! 私だって初めて見るわ…」
ナミの隣に座っていたゾロが覗き込む。ベリカの価値が分からない男達はナミとキルマの会話には目もくれず再び食事を再開した。
ベリカの名を知っているビビ、サンジ、チョッパーも耳を傾けながら再び食事を口にした。
未だナミはカードに穴が開くほどじっと眺めている。
裏返すとそこ刻まれた名前は所持していた本人〝キルマ〟の名前ではなくこの島の取締役、〝フランゲルダルク〟の名前が刻まれいていることにナミが気付く。
ナミが指摘すればキルマは知らずに使っていたらしく、間抜けな声を上げた。