第1章 ラビスタ編〝未来の海賊王へ〟
「お前も眺めてねぇでいいから食べろ」
「いや…っ、もうちょっと…」
「いいから食え‼」
食べ進める他の皆とは違い、いまだ料理を目に焼き付けるように眺めるキルマにしびれを切らしたサンジが置いてあったフォークで目の前のサーモンのカルパッチョを突き刺しキルマの口に詰め込んだ。
途端に口に広がる甘酸っぱいソースに呆然としながら口をもきゅもきゅとその食感を噛み締めゴクリと喉を通った。
「……おいしい。こんなに美味しい料理、初めてジークさんの所で食べた以来だ。むしろ美味しいなんて言葉じゃ勿体ない。」
「そんなにか」
「僕は君達が羨ましいよ。毎日こんな食事が食べれるなんて。君たちは幸せ者だね」
「…お前、金持ってるんじゃねぇのか?」
「ん〜。…まあ持ってるね。」
ルフィが問いかける。否定はしない。
「どれくらい持ってるの?」
「10億ベリーとか?」
ビビが興味本位で聞いてみると突然、ガチャン、ドカンと大きな音がまばらに船内にこだまする。
音の正体は皆の持っていたフォークやスプーンが机に落ち、ウソップ、チョッパー、ナミの三人は椅子から崩れ落ちる音だった。
「アレ、皆どした。 あ、もしかして時間が止まるドッキリ?」
その場にいる全員が仰天すると共に硬直した。空いた口が塞がらないとはこのことだ。
キルマはその場から立ち上がると腕を伸ばし、呆気に取られているビビとルフィ、サンジとゾロの先ほどまで握られていたであろう手に机に落ちたスプーンをそれぞれに通した。
転げ落ちた三人はおずおずと椅子にゆっくりと座り直すと改めてキルマに視線を向けた。
10億ベリーという大金、一体どこからやってくるのか。一体どこからのお金なのか。考えれば考えるだけ無限に裏の出所しか思い浮かばない。
しかしここでうろたえないのはあの女だった。