第1章 ラビスタ編〝未来の海賊王へ〟
「えっと、……こちらの美女はどちら様でしょうか?」
「初めまして、私はビビって言います。この子はカルーよ」
船内へ入るとキルマ達を出迎えたのは、キッチンで夕食の準備をしていたサンジとテーブルに座っている水色の長髪の〝ネフェルタリ・ビビ〟と名乗った少女。
テーブルには見慣れた街市場の食材達が並んでおり、船内には海鮮類の塩の匂いが充満し、キルマの鼻をくすぐった。
そしてビビに頭を撫でられながら紹介されているのは超カルガモのカル―だ。
カル―はクワッと大きな口をキルマに向かって開けるが、キルマはそれに怖がる気配もなく、よしよしと同じようにカル―のくちばしを撫でる。それに気を良くしたカル―は嬉しそうにキルマの手に頭をこすり付けた。
「おい、なんでそいつがいるんだ」
カル―を両手で撫でまわすキルマにキッチンから眉間にしわを寄せ不機嫌な顔をしたサンジの問いにウソップが口を開く。
「いいじゃねぇか、奢ってもらったんだし。そんなけちけちすんなって。」
「僕もさ、君の料理食べたいなって思って!」
「てめぇに食わせる飯なんてねェよ。たっく、せっかくビビちゃんと2人でディナーだったのに…」
「お、サンジ! 今日の飯はなんだ!?」
そう言ってルフィが料理をしていたサンジ飛びつきキッチンへ引っ張って行ってしまう。それによろけながらルフィに構うサンジをビビは机に頬杖を付きながら微笑んだ。
するとトントン、とキルマの肩を叩くとナミが耳打ちする。
「キルマくん大丈夫よ、サンジくんはちゃんとあなたの分も作るわ」
「はい、知ってますよ」
ナミのその言葉にキルマは笑顔で答えた。
まるで当たり前のように言うキルマにナミは首を傾げた。彼は先ほどあったことを覚えていないのか。
「…どうしてそう思うの?」
ナミは意味もなく問いかけた。
聞かなくてもきっと、自分でも分かっていたはずなのに。そして彼の口から出た言葉は同じだった。
「だって、彼は優しいから」