第1章 ラビスタ編〝未来の海賊王へ〟
「島だァ!!」
麦わら帽子の海賊旗を掲げた船にそんな声が響き渡る。
羊の顔の形をした船首で胡座をかき双眼鏡を無我夢中に覗き込むのは麦わら帽子をかぶった少年、船長のモンキー・D・ルフィ。
昨日までの嵐が嘘のように感じる蒼天を仰ぐと、ルフィはトレンドマークの麦わら帽子をかぶり直す。
彼の声がかかり、しばらくするとその島は徐々に姿を見せた。
「綺麗な島だな…」
長鼻の男、ウソップが思わずほろっと口にした。
その島は一見、傍から見ればただの小さな島である。しかしその島は沖に近付くにつれ船員全員の目を奪った。
「おれ、ラビスタ島なんてドクトリーヌの本でしか見たことないぞ…」
「これもきっとなにかの縁ね。エターナルポースが治ったらすぐに出発よあんた達‼」
青鼻のトナカイ、チョッパーに続き鮮やかなオレンジ色の断髪をしたナミが呟く。
水平線に広がる領海と島を囲む鮮やかな緑。少し先には同じように真っ白な建造物が並び、真っ青に輝く海とのコントラストがより一層美しさを際立てる。
大海賊時代の今には見合わない、まるで異国情緒あふれる風景が広がっていた。
「おい! サンジ危ねぇぞ!」
「ウソップ、この下見てみろ。他の島と海水の透明度が桁違いだ」
金髪の男、サンジが船の手すりから身を乗り出し海底を覗くと、そこには澄んだ青が広がっていた。海底に影を作り、その透明度はまるで船があたかも浮いているかと錯覚するほど。
珊瑚礁や海藻、この島でしか生息しない鮮麗した生き物達。そんな魚達は船を避けることなく、優雅に船の下へと消えていった。
その小さな島、ラビスタ島は驚くほど恵まれている。
小さな島ながら輸出量は他の発展途上の島にも劣っておらず、この島で揃わないものは、何ひとつない。
旅の途中、現地で新鮮な食材や資源、出店で多種多様な日用品をそろえようと観光客や輸出船はもちろん。海賊船が止まることも日常茶飯事だ。
島の住民、観光客、バイヤー、海兵に海賊。この島には様々な人たちが足を運ぶ。
数十年前、これを良いことに海軍が目を付けた。