第1章 ラビスタ編〝未来の海賊王へ〟
「…どっちにしろ、あいつは今頃食材でも買って船に戻ってるだろ。泊まるも泊まらないもお前達の勝手だが、一旦戻った方がいい。」
「そっかぁ、それは残念だね…」
「じゃあ、お前も来るか?」
「え、いいの!? 行きたい! 是非!」
肩を下げるキルマを横目で見ていたルフィが声をかけた。その言葉を聞いて周りの皆が面を食らう。
仮にご飯を奢ってもらった人で恩はあるものの、未だ得たえの知れないこの街の幹部を船内に誘い、夕食を一緒に共にするなんて。なんて怖いもの知らず。ここにいるルフィ以外の皆がそう思っただろう。
しかたない、彼はそういう者だ。と彼らは毎回自問自答を繰り返すのだ。
諦めたようにゾロもため息をついた。
そんなゾロにキルマは目を向ける。
(――なんか、この海賊が成り立ってる理由が何となくわかった気がする。)
気を良くし小さく微笑むと突然ハッと何かを思い出す。
「あ、でも待って。団長にまず報告しないと…」
仕事をすっかり忘れていた。そう言って慌ただしく取り出したのは子電伝虫。カチャッと、マイクを手に取る。
「えぇ!? 今ここでか!?」と声を荒げるチョッパーにキルマは人差し指を口に当て合図する。
プルプルプルプルと3コール鳴ったところでガチャッと子電伝虫の瞼が上がる。それに皆が興味深そうに耳を澄ましゴクリと喉を鳴らした。
「お疲れ様です団長。港、001担当のキルマです。本日の来客船1船、計6名を確認しております。また、その…船員の方々と交流を深めまして、一緒に食事をとお誘いを頂きまして。今晩は本部に戻れないかもしれません。」
勝手に〝今晩船に泊まる〟と、話が盛られていることに気付き、ウソップが「そんな話したっけか?」とゾロに小声で問いかけるが「いや、」とゾロが首を横に振った。
皆の視線がすました様子で話すキルマに集まる。ルフィはニシシと変わらず嬉しそうに笑った。