第1章 ラビスタ編〝未来の海賊王へ〟
あまりにもお人好しで優しく人に尽くすキルマ。よくよく考えればずっと殺気なんてものも感じない。
彼は、本当にまれにいる本物のお人好しかもしれない。
しかし、あの昼のジークの店で発覚したキルマの〝団長〟と言う人物の独裁国家が裏で行われているのであるならば、彼はその部下だ。未だ見せないだけで、行動を起こさないだけで、手下の彼にも必ず裏の顔がある。だがそれと同時に手下だから逆らえないと言うのも考えられる。
考えれば考えるほど膨らむ思考にゾロは眉間に皺を寄せながら唸り頭をかいた。
だが自分の勝手な固定概念を押し付けるのは違う。ゾロが見てるのはお人好しの方のキルマでそれ以外のキルマはいない。
(――まぁ、今言えるのは。この島は確実に何かがおかしいってことだけだな…)
「俺はお前を信用しているわけじゃない。だが、まぁ、感謝するよ。…覚えておけよ、俺は敵とみなした者は必ず切る。」
「ふふ、………できるかな?」
感情が未だ入り混じったままだが、胸倉を離しながら言うゾロのその言葉に、キルマはよく知っているあの人を思い出し小さく笑った。