第1章 ラビスタ編〝未来の海賊王へ〟
ナミはなぜか震える手でその箱を受け取ると中身を確認する。
紛れもない。それはさっき街を回る際に、ナミがショーケースから眺めていた第二関節ほどの真っ赤な3000万ベリーのルビーだった。彼女が震えるのも無理はない。ナミは再び箱を閉めそのまま硬直した。
「おいてめェ! どういうつもりだ!」
「まあまあ、怒らないで剣士さん。あの時言ったでしょ、ただの僕の趣味だよ。」
どうやら船員達の扱いが気にくわなかったのか突然胸倉をつかみ問いかけてくるゾロに両手を上げ、突き刺さるような鋭い目をキルマは柔らかな目で見つめた。
ジークの店で食事を取る時に、彼は他の皆より人一倍警戒心が強いことを察していた。そのはず、キルマは隣でゾロが一人コップの水を意味もなく眺めていたのを知っている。それも異様に険しい顔をして。
そして何を思ったのか、仲間が相手のうまい具合に手の平で踊らされているような感覚が気にくわなかったのか。そう思うのも無理はない。なぜならキルマも、この経験が初めてではないからだ。
「大丈夫、僕は強くない。どちらかと言ったら弱い。ゾロならわかるでしょ。なんなら見張っててもいいよ、僕のこと!」
「…だから、そういう問題じゃねぇよ」
落ち着いた口調で言う。だがキルマのその言葉に嘘はない。彼の発言からある程度戦闘はできるということゾロは察して取れた。
しかしキルマは見た感じ武器も持ち合わせておらず、背丈は小柄で白く、そして細い。能力者でもなさそだ。もし彼に〝僕は強い〟と言われても、おそらく見た目の説得力はないだろう。
だが、もし彼が実際になんらかの行動に出た際、おそらく大半のことは解決できるだろう。たとえ彼が能力者であろうと、見た目に反して凄まじく強かったとしても、ゾロにはその自信があった。
あの日誓った、〝二度と負けない〟という、今は形も証拠もない言葉だが、そのおかげで乗り切れることだってある。強く思う気持ちは、時に自身の限界を超えることもあるからだ。
今まで経験したことのない、彼の読み取れない行動にゾロは少し困惑していたのかもしれない。