第1章 ラビスタ編〝未来の海賊王へ〟
「…何これ?」
突然かけられた青い十字架のペンダントを見ながらナミは問いかけた。
「このペンダントはこの島の女のひとじゃないっていう印なんだ。ナミは綺麗だし海賊っぽくないからね。」
「あら、良く分かってるじゃないキルマくん」
「もちろんだよ。…まあ、お守りみたいなものかな。離しちゃだめだよ。」
そう言って小さく微笑むと再びハイチェアへと戻る。すると背中越しにサンジがキルマに問いかけた。
「この島のルールかなんかなのか?」
「まぁ、そんなところかな。女の人限定ね。たまにいるんだよね、この島の女の人で上手く紛れてる人とか。」
「…密売の防止とかか?」
「全然違うね。ラビスタ島はそんなことなんてしなくても盛んだよ」
「じゃあ、……なんでだ」
嫌なくらい鋭い彼の勘にキルマは目を細めた。
おそらくサンジは何か勘づいてる。
(これは、めんどくさいことになりそうだなぁ――。)
そんなことを思いながらもキルマはハイチェアを回転させサンジの方を見る。
彼らは他人にベラベラと言いふらすような人ではないことはキルマは何となく感じていた。これはラビスタ島の裏の機密情報だ。この現状はこの島の人しか知らない。かと言ってそれでその情報が漏れたとしても海軍や海賊が動くようなことではない。いいや、動けないと言った方が正しいだろう。たとえそうなったとして失われるのは、また別にある。
異様に静かな間が空いた。
カチャカチャとジークが片づける音だけが響き、いつの間にか皆食べる手を止めていた。
ゆっくりと瞬きをすると、キルマは落ち着いた調子の声で言う。
「簡単に言えば…そうだな。無力…と言うか、権力がないって言った方がいいかな。」
「………どういうことなんだ?」
口周りに白いソースが付いたままのチョッパーが問いかけた。
遅れて何かを察したジークが手を止め、キルマに目線を向けた。その意味をキルマは知ってる。