第1章 ラビスタ編〝未来の海賊王へ〟
「キルマはなに食べてるんだ?」
「僕はデミグラスステーキ!」
「へー、うまそうだな!」
「一個食べる?」
「いいのかぁ⁉」
「いいよいいよ」
キルマがカウンターから身を乗り出すと何かを察したのか少し身を引くゾロ。その目の前をキルマの上半身が通り、フォークに刺さったステーキを差し出しルフィはそのまま口に入れ咀嚼した。
「うん、うめェな。」
「でしょ~う! ジークさん、お水!」
「たく、俺は水じゃねぇぞ」
自分のことのように機嫌を良くするキルマ。再びカウンターのハイチェアに座ると空になったコップをジークに差し出した。
カウンター前からピッチャーを持ったジークの手が伸びてくる。キルマがコップを差し出せばコポコポと水が注がれると、キルマはそのまま水を口にした。
「…いいのか、港の仕事は」
「だって昨日まで嵐だったんだ、もう観光客なんて来ないよ。こいつらがおかしいだけ。」
ジークはキルマの近くに静かにピッチャーを置くと、いつものトーンでキルマに問いかけた。
ジークは“団長”というキルマの上司の機嫌を損ね、殺されかけた新人の話を朝から聞かされている。
そして今目の前にいる彼は今現在、その代わりを任されているのだというのに港の仕事を投げ出して観光客に料理を奢り呑気に昼食を取っている。しかし珍しく心配するジークをものともせず、危機感のない返答が返ってくる。
ジークは小さく息を吐いた。完全に忘れていると言ったような目でキルマを見る。
「ペンダントはいいのか?」
「…ペンダント?」
一体なんの話かと「ペンダント?」と言う言葉をゾロが繰り返した。
「…あぁ! そうだった!」と、突然声を上げハイチェアから降りると懐のジャケットから十字架の形をしたブルーのペンダントを取り出しナミの首にかけた。