第1章 ラビスタ編〝未来の海賊王へ〟
すると「おっさん! そこで焼いてるお肉全部くれ!」と、奥のキッチンにある大きなオーブンを指さしながらルフィが言う。
指差した先には嵐が明け多くの観光客が訪れるのを見込んでジークが昨日から低温でじっくり焼き仕込んでいた骨付きカルビだ。いい肉が入ったその日に仕込んで加工し焼き上げるため毎日出される品ではない。
出されたその日は特にラビスタ島に足を運んだ海賊達に人気なようだ。
キルマが理由を聞けばジークは「どうせ雰囲気と偏見だろう」とだけ答えるだけだった。
今日はちょうどメニューにそれが乗ってる日だ。…と言ってもルフィはおそらくメニューなんて目もくれなかったであろう。
キッチンから漂う匂いにつられ、咄嗟にあの肉を指さしたに違いない。見る目があるのかないのかは置いて、彼はおそらく美味しい肉が食べれればそれでいいのだ。
「全部ほしい!」と言うルフィにジークは何も言うことなく、メモを取った。
「皆は何にする…?」
キルマはハイチェアを少し回転させ皆の顔を伺いながら問いかけた。
「俺は霜降りカットステーキ…ミディアムレアでできるか?」
「もちろんだ。…そこのお嬢さんは?」
「えっと…じゃあサンジくんと同じものを!」
「俺はこの厚切りカットステーキのニンニク醤油!」
「おれはそのミルクソースがいいぞ!」
同じメニューを注文したサンジとナミに続き、ウソップとチョッパーがソース違いを指差しながら注文する。
「ゾロは?」
「俺は…なんでもいい」
「じゃ僕とゾロは玉ねぎソースとライスで。あ、ゾロのだけ300gね。」
「すぐ作る、待ってろ。」
「あ、皆足りなかったら全然おかわりしていいからね!」
なんでもいいと言うゾロにキルマは同様に自分と同じメニューを注文し、最後にはにこやかにそう皆に呼びかけた。ペンを一通り走らせるとその紙をキルマのカウンター前に置く。
46000ベリーと書かれた手書きのレシートにキルマは懐から50000ベリーを出し遠くへと離した。