第1章 ラビスタ編〝未来の海賊王へ〟
「こっちだ!」
港に近づいてくる船の先頭には一人の少年がいた。
海賊旗からしてあの麦わら帽子をかぶった少年が船長であることが分かる。自分と歳の変わらない船長の少年に関心しながら、拡声器で指定の停泊場へと誘導する。
キルマの指示を聞いて船員に指示するのはオレンジ髪の女。おそらく彼女がこの船の航海士であり、あの嵐のなか船を先導した張本人に間違いない。
(それにしてもこんな大きな船、一体どこから…)
見たことのない海賊船に海賊旗、おそらくまだ世間に名が轟いていない無名の海賊達。無名にしてはもったいないくらい立派な船だ。よく見ると船首は羊の顔の形をしている。
しかしここは無名の海賊も名の知れた極悪海賊も関係ない。なぜならラビスタ島は特別中立保護区域だからだ。考えるだけ無駄だと分かり、キルマはすぐに余計な詮索はやめた。
そんなことを考えている間に停泊した船から船員が次々と下りてくる。
刀を三本所持している剣士に片手にパチンコを握って意味もなく周りを警戒する狙撃手、煙草を吸う金髪の男に青鼻の小動物。
キルマは目を細めた。
やはり皆随分と若いようだ。手配書もまだ見たことがない、やはり結成して間もない海賊。名が知れてないのも納得がいく。
「長らくの乗船お疲れさまでした。未来の海の戦士達、ようこそラビスタ島へ。」
降りてきた船員達に向かってキルマは笑顔を向けた。