第1章 理想のペアと自動販売機
「オレ、やります!」
丸井はもう早速、ポケットから財布を出します。
「しかし、この自動販売機、お金を入れるところがないようですが」
同じく、財布をポケットから出していた木手でしたが、お金投入口がなく困っていました。
高校生⑧「お金ならいらねえよ。これ1個あれば充分だから」
と、高校生⑧はポケットからテニスボールを出します。
「お金を入れる代わりにボールを入れるんですか」
これは木手が言い、
「すみません、あのー、オレたち、ボールを持っていません」
丸井が後ろ頭に片手を置き、恐る恐る高校生⑧に申し出ると、
「それなら、オレのやるよ。その自販機、賢くてさ、機械の認識で1人1回しか出来ないようになってるから。オレも何回でもやりたいが、もうすでに1回やっちまったから出来ねえ。お前たちの見て楽しむことにするよ」
と、ポケットからテニスボール2個を取り出し、理想のペアに渡しました。
「よっしゃ、これで1回出来る」
「では、お先に」
「こら、木手、オレが先だろい」
「ん……」
木手は持っていたテニスラケットを前に出し、ラケットトスを始めようとします。