第1章 理想のペアと自動販売機
「インストールしたらいいじゃないですか」
いきなり後ろから声がしたためか、丸井は声にならない声があがりました。
「ひっ、キテレツか。おどかすなよぃ。いつからいたんだ?」
少年が振り返り、見えた人物は木手永四郎でした。自動販売機の飲み物を買うため、丸井の後ろに並んでいたようです。
「あなたが仲間の飲んでるものをつぶやいていたあたりからです。早く飲み物を選びなさいよぉ」
木手は小さくため息をつき、言います。
「え、別に隣来たらいいじゃん。ここにも自販機あるんだから」
後ろを振り返ったままの状態で、隣の自動販売機を右手で指さし、手のひらを上に向けた丸井です。
「隣の自動販売機ですか。オレの買えるものがありません」
木手に言われ、隣の自動販売機を見ると、製造見本全部が水であり、丸井は吹きます。
「隣の自販機、水ばっかかよいっ!」
「電照板を見ると、跡部くんが写ってますね」
「本当だ。隣の自販機、跡部財閥のか。キミ様と跡部…。もし、あの2人が交渉とかってなったとき、どうなるかなぁ……」
「さあ? それより丸井くん、早く飲み物を決めなさいよぉ」