第1章 理想のペアと自動販売機
ある日の午後のことでした。コーチたちが会議の関係でサーキット練習が午前中に終わり、宿舎の泊まり部屋でユニフォームから私服に着替えた丸井ブン太はルームメートの芥川慈朗と向日岳人が昼寝をしている間、合宿所内を散歩していました。
喉が渇いてきた丸井は、玄関近くの自動販売機に寄ります。自動販売機は2台あり、丸井は向かって左側の自動販売機の前に立ちました。
「んー、どれにしようかなー。下の段の缶コーヒー、前に幸村くんが飲んでたな。真田と柳は上の段のペットボトルのお茶、仁王と柳生と赤也は中くらいの段にある甘い炭酸飲料飲んでたの見たことあったな。そして、そしてジャッカルはこの清涼飲料水を飲んでた」
立海大のメンバーが前に飲んでいた自動販売機の飲み物をあげているうちに、丸井はどの飲み物を買おうか、ますます迷ってしまいます。
一旦、考えることを止めた丸井は、自動販売機の上の製品見本から下の電照板に視線を移しました。電照板を見ると、海岸をバックに君島育斗が片手に乳酸菌飲料を持ち、ウインクした姿が写っていたのです。少年はつぶやきます。
「キミ様のCMでやってたな。うーん、それも良いなぁ。ん、さらに、アプリをインストールして、ポイントを貯めてキャンペーンに応募するとキミ様グッズを抽選でプレゼントか。この機会にアプリ、インストールしようかなぁ」