第1章 理想のペアと千の技を持つ男
丸井は最初、木手に声を掛けず、少年がぶら下がり健康器で筋力トレーニングをしている姿を見ていたのでした。
木手は数を数えながら両手の力を使い、身体を上げたり下げたりを繰り返していました。
ようやく、木手がぶら下がり健康器から降りたところ、丸井は声を掛けます。
「よぉ、キテレツ、こんな隅っこで1人でトレーニングか?」
「あなた、さっきからいましたね」
「何だ、気付いてたのか。あ、いや、オレも声掛けようと思ったけど、トレーニングに真剣みたいだったからさ」
「丸井くん、使いますか?」
丸井が次に使いたいと思ったようです。木手はぶら下がり健康器を指して聞きました。
「いや、使わねえよ。ただ、トレーニングルームに寄っただけ」
「そうですか」
「練習相手探しててさ、なあ、キテレツ、オレと打たねえか?」
丸井は木手を練習に誘います。
「……お断りします。他をあたってください」
木手は少し考えたあと、断りました。
「他か……」
丸井は立海の仲間のことを思い浮かべます。しかし、仲間たちの誰かを練習に誘う勇気はありませんでした。