第1章 理想のペアと千の技を持つ男
「そんな言い方、ないだろい」
丸井はムッとなり、睨みます。
「………」
木手も睨み返していました。
しばらくその状態が続いていると、誰か来ます。氷帝の忍足侑士です。
「丸井と木手やないか。何や、どうした?」
「どうもしません」
忍足が来たことで面倒くさくなったか、木手はトレーニングルームから出て行きました。
「おい、木手、待てよ」
と、言った丸井でしたが、木手は戻って来ません。
「ほな丸井、コート行こか。練習相手、探してたんやろ」
忍足が誘いますが、丸井はしょげた様子でいました。
「そうだけど、今練習したい気分になれねえ」
「そっか、木手と一緒に仲良う打ちたかったか」
「んなわけないだろい。誰があいつと仲良う……わり、ちょっと口調うつった」
「なら、オレと打ったってええやろ」
「忍足……。ああ」
「打っているうちにモヤモヤ収まるやろ」
「モヤモヤなんて……」
丸井は先ほど木手と睨み合ったことを頭に思い浮かべてしまいます。
「ほな、コート行こか」
忍足は片手で丸井の肩に手を置き、先にトレーニングルームを出ました。丸井も忍足のあとについて行きます。
「………」
このとき、木手はトレーニングルームの近くにあった自動販売機の裏に隠れながら、丸井と忍足の様子を見ていたのでした。