第10章 学級委員長争奪戦!
「でも、お前にとっては大きな一歩だろ」
そう言った消くんは
私の頭を軽く撫でてくれた。
あぁこの感じ、懐かしい。
こんな私を引き取ってくれて、
悩みを聞いてくれて、
私にとって唯一の理解者だった。
一人暮らしに切り替える前は
今まで一緒に暮らしてきて
私の中で消くんは、
お兄ちゃんみたいな、そんな存在だ
(昔はよくこうやって撫でてくれたなぁ…)
「どうした?そんなにニコニコして」
『えっ?私顔に出てた…?!』
久しぶりのこの感じが嬉しくて
つい顔に出てしまったみたいだ
自分で鏡を見なくても
口角が上がってるのが分かる。
『いや…この感じ久しぶりだなぁって思ったらちょっと嬉しくて…!』
「…なんかあった時はすぐ言えよ。いつでもこうしてやるから」
私が頭を撫でられるのが好きなことは
どうやらお見通しなようだ
今までもそうだった、
消くんに隠し事をした時も
すぐに見破られてしまう。
(消くんてばなんでもお見通しだよね)
『ありがと……お兄ーちゃん』
私は悪戯っぽく笑うと
ノリでお兄ちゃんと呼んでみた。
「……」
(あれ、私何かまずいこと言った?!)
消くんはそのまま固まったままだ
ドライアイなはずなのに
珍しく瞬きが全くない。
『あ、あの…消くん?』
「あ、いや、なんでもない。ほら、もう教室に戻れ」
『うん…??分かった。じゃ、また後でねー!』
よく分からないが用は終わった
みたいなので私は教室に向かった。
(結局何の用だったんだろ…??)
教室に入ると一瞬周りからすごく視線を
感じた気がするのは気のせいだろうか
なんだろう、
直接ガン見されてるわけじゃ無いのに
すごく視線を感じる。
(いや、ただの自意識過剰か)
この時勝手に答えを出して
一件落着した私は本当に視線が
向けられていたことに気付いていなかった