第9章 無防備すぎるお前が悪い。
「海波は、強いんだな」
『強い?…私が?』
何に対してに強いなのかは分からないけど、
私は全然強く無いと思う。
たしかに今は少しマシになったかもしれない、
けど昔の私は強いなんて言葉と正反対だった。
「自分の個性が嫌いでも、ちゃんと向き合おうとしてる。そんなお前は強ぇよ。…俺には出来ねぇことだ」
俺には…ってことは、
轟くんもなにか抱えているのだろうか。
今の彼の表情は険しいというか、
どこか切ないように見える。
『轟くんも、自分の個性あんまり好きじゃ無いの…?」
「あぁ。…俺もお前と同じで幼い頃からヒーローへの道が決められてた。個性のせいでな」
轟くん、半冷半燃なんて
最強かよって感じの個性だし
すごいなぁって思ってたけど、
やっぱり人それぞれ抱えてるものがあるんだな
『そっか…でも、その個性でよかったって思える日がいつか来るといいね。』
「…そうだな」
心の籠ってない返事。
どんな事情があるのか知らないから
あまり踏み込めないけど、
たぶん私より相当拗らせてるのは伝わってくる
『私達…抱えてるものは違っても、ちょっと似た境遇なのかもしれないね。』
「………あくあ」
『え?』
「あくあって呼んでもいいか…?」
『う、うん!いいよ?』
(びっくりした…!急に名前で呼ばれたから…)
「俺のことは焦凍って呼んでくれ」
『わかった…!』
私と焦凍くんの間にふわっとした
暖かい空気が流れる。
(なんだかちょっと仲良くなれた気がするな…!)