第9章 無防備すぎるお前が悪い。
−あくあside−
『はぁー、まさかあんなに雨降ってくるなんて思わなかったよ。お陰で制服もびしょ濡れだし…』
私はお風呂からあがると
雨に濡れた制服をハンガーに干す。
(これ明日までに乾くかな?…いや、乾かないな絶対)
制服と睨めっこしていてもどうにもならないので
髪の毛を拭くためにタオルを手に取り
ソファーで待つ轟くんの元へ戻る。
『轟くん、お風呂どうぞ……ってどうしたの?』
リビングに戻るとソファーに座る轟くんが
自分の左手を見つめて
どこか険しい表情をしていた。
私が話しかけたことに気づいていないのか
轟くんは無言のままだ。
『轟くん?』
私はソファーの隣に座るともう一度名前を呼ぶ
「…海波。」
『そんな険しい顔してどうしたの…?』
「海波は…自分の個性、どう思ってる?」
『自分の個性…?』
“どう思ってる”って、どういう意味だろう。
(好きか嫌いかってこと…?)
私が脳内で考えてる間にも
轟くんは真剣に私の返答を待っている。
『えっと…好きか嫌いかってことなら…どっちかといえば、“嫌い”かな』
「そう、なのか…?!」
私の返答がよほど意外だったのだろうか、
さっきまでの険しい表情とは一転して
轟くんは驚いた表情をしている。
『私…自分の個性のせいで、周りからヒーローへの道を強要されてさ。将来を勝手に決められて、勝手に特訓させられて、昔は正直こんな個性なければよかったって思ってた。』
これがもしヒーロー志望の子なら
喜ぶべき出来事だと思う。
でも、ヒーローを志望してなかった私にとっては
将来のレールを一つに決められて、
自分の個性にうんざりしてた。
『…でもね、今は自分の意思でヒーローを目指してる。いつか、自分の個性を好きになれたらいいなって!たとえ好きになれなくても、誰かのために使えるならそれは私がヒーローを目指す理由になる。』