第7章 春なのに、あつい
−あくあside−
戦闘訓練全ての試合が終わると
私は保健室に向かった。
(出久くん、大丈夫かな…)
先程の試合で大きな怪我をしてそのまま
保健室まで運ばれていった出久くんが心配だった
多分リカバリーガールの治癒でも
一回じゃ完治しないだろう。
扉の前まで行くと中から話し声が聞こえてきた
声からすると
リカバリーガールとオールマイトだ。
扉に手をかけようとした時、
[全く、力を渡した愛弟子だからって甘やかすんじゃないよ]
[返す言葉もありません…彼の気持ちを汲んでやりたい躊躇しました…して、その…あまり大きな声でワン・フォー・オールにことを話すのはどうか…]
(力を…渡した…?)
きっとこれは聞いていい話じゃないと
自分でも分かっていたけど、
何故かその場から立ち去ることができなかった
[あーはいはいナチュラルボーンヒーロー様。平和の象徴様]
[この姿と怪我の件は雄英教師には周知の事実ですが個性の件はあなたと校長、そして親しき友人、あとはこの緑谷少年のみの秘密なのです]
聞いてしまった。
聞いちゃダメだった。
私は聞かなかったことにしようかと思ったけど
そう嘘をつくのはよくない
ちゃん聞いてしまったと言うべきだ。
『失礼します。出久くんいますか』
保健室内での会話が
一区切りしたのを見計らって扉を開けた。
「…っあくあ少女?!…もしかして今の話…」
『ごめん。聞くつもりはなかったんだけど…』
「…聞かれたからには、話すべきだな」
『ちょっと待って、その前に出久くんに治癒してもいいかな?ちーちゃんでも一回じゃこの傷治せないよね…?』
「うん、治癒してくれるなら助かるよ」
私は出久くんが眠るベットの
横の椅子に座って歌い始める。
(集中、集中…。今日はまだ歌っても大丈夫…)
静かな保健室の中で私の歌声が響き渡る。
次第に出久くんの周りに
黄色い光が漂い始めてそれと同時に
傷がどんどん癒えていく。
大体の傷が治った頃、
出久くんは目を覚ました。
「…あれ、あくあちゃん…?…もしかして治癒してくれたの?」
『うん…!もう大体の傷は治ったと思うよ』
「…ありがとう!」