第4章 ヒーロー科と新たな出会い
–爆豪side−
ついさっき食堂から出てきた
海波とすれ違った。
軽い足取りで走っていって
廊下の突き当たりで止まると、
そのまま階段を上がって行くのが見える。
(ん…?階段…あんなところにあったか?)
好奇心かなんなのか、
俺は気がつくと体が勝手に彼女を追いかけていた
そのまま海波が登って行った階段を登ると
目の前には大きな扉がある。
(ここ、何があるんだ??)
錆びた重い扉のドアノブに手をかけ
扉を開こうとしたその時、
扉の向こうから歌声が聞こえてきた。
どこかで聞いたことがあるような、
それでいて心が癒されるような、そんな歌声。
この歌を誰が歌っているのか知りたい、
もっと近くで聴きたい。
無意識にそう思っていた俺は扉を開けた。
扉の先は屋上だった。
屋上の端の手すりにもたれかかって
歌を歌っている生徒を除いて
その場に他には誰もいない。
そしてその生徒は背を向けたまま歌っているので
俺がここにいることに気づいていない
(黄色いさらさらロングヘアー…)
やっぱりアイツか。
「おい、モブ女_______」
声をかけようと伸ばした手を、
何故か引っ込めた。
いや、理由は明確
もっとこの歌声を聴いていたいと思ったから
人の歌を聴いてこんなにも
心が癒されるなんて初めてだ
(心が…癒される…?あれ、1年前にも同じようなことがあった気が…)
一年前のあの日…
ヴィランに襲われたあの日…海岸で…
『ってあれ?!な、え、爆豪くんなんでここにいるの?!?!』
その時、歌い終わった海波が
俺の存在に気づいたらしく
驚いた顔で振り返ってきた。
「別に、たまたま通りかかったら歌が聞こえてきたんだよ」
”たまたま“なんて嘘だ。俺はお前を追いかけてこの場所に来た。
『ええ、居るなら言ってよ…超恥ずかしいんだけど…!!あ、でもこの場所他の人は立ち入り禁止だから、私がここにいたことは秘密だよ??』
____________あぁ、これは、きっと一目惚れなんてもんじゃない。
屋上に照らす太陽の下で
「秘密だよ?」といたずらな笑顔を
向けた彼女を見て、俺はそう思った。