第25章 ホントは分かっていたとしても
−轟side−
「……ホントに大丈夫か?」
まるで階段を踏み外した事を
理解していなかったような反応をする
あくあの顔を覗き込みながらそう言った
『…あ、うん大丈夫だよ!助けてくれてありがとう』
いつもと同じ笑顔でそう答えるあくあ
でも今日は何だか、
いつもより元気がないというか
…………というより、
「あくあ、お前顔赤くねぇか?」
『え?!そんなに赤い?!…た、多分今焦凍くんと距離が近いから緊張しちゃって…』
「いや、そうじゃなくて______」
“熱でもあるんじゃねぇのか?”
そう言おうとしたけど
その言葉はあくあの言葉で
遮られてしまった
『って、もうすぐ試合始まるから見に行かなくちゃだ…!ほんと、さっきはありがとう!』
「おい、俺の話を聞______」
『焦凍くん。』
「……?」
『…………その個性は、焦凍くん自身の力だって事、忘れちゃダメだよ』
俺の個性は…
俺自身のもの…
突然何を言い出すかと思えばそんな事か。
どうしてあくあは
そう俺に言ったのか分からない
俺の個性は、両親のもの
半分は母親で、
もう半分は親父の、
アイツが生み出したものだろ。
「お前……」
『じゃ、私行くね!』
結局言おうとしていた事を言えないまま
そのままあくあは
階段を降りて行ってしまった